場所:埼玉県吉見町など
日数:日帰り
旅行時期:2023年5月
この文章は、私が大学3年次のゴールデンウィークに、埼玉県吉見町の辺りを歩いた思い出について、一週間ほど後に記したものである。
とはいえ、文章自体が未完かつ内容も稚拙なものであるため、このサイトに掲載するにあたって補記や修正を加えている。そのために実際の経験や感覚と比べて異なるものも多いが、大目に見てほしい。(2026年5月)
私は旅が好きだ。知らないものを見るのが好きだ。それはその土地の歴史や文物を知るためであり、偶然に素晴らしい景色や風土を発見する喜びに触れるためでもあり、そして平々凡々で小さな世界に閉じこもったままに大学生活を終えてしまうのではないかという危機感と孤独感を一瞬でも忘れるためでもある。
3か月前に東松山を訪れたのも同じ理由であった。春休みを無為に過ごしてしまうことを恐れつつも、遠くへ行く計画性も行動力も欠如していたその時の私は、池袋から50分とかからない東松山へ行った。かの有名な吉見百穴や、関東戦国史の舞台・東松山城といった史跡から、岩室観音に箭弓稲荷、真光系新興宗教の巨大神殿も遠巻きに見た。様々なものや風景を見て満足だった。
しかし、私の旅は無為の日々を有為のものだと思い込むためのものでもある。駅から30分の、デートスポット化していた史跡へ行くだけではダメなのだ。彼女を連れて吉見百穴まで行き、歴史を語る優しそうな好青年を傍目に、1人速足で歩く陰気な男の劣等感は募っていく。
その旅を終え、いつしか私の妄想は、吉見百穴に立つ観光掲示板に描かれた、吉見百穴と東松山城の後背に広がる吉見丘陵と、そこに点在する史跡名勝へと広がっていった。俺より華やかな彼ら彼女らが見に行こうとも思わない美しい歴史の地、果てしない関東平野の景色を俺は見てやるんだという哀れで見下げた競争心と、飽きやすい好奇心とで立てたその旅程を、これまでの無為の日々と、その間に肥大化した自意識とへの挽歌として実行する時が来たのだった。
再び東松山を訪れたこの日はちょうどゴールデンウィークの中日だったが、川越特急も始発から乗れば大方の人が座ることができて、東松山駅までは寝ていればすぐに着いた。
東松山駅から吉見百穴までの道のりは簡単で、ただ東へと大通りをまっすぐ行けばいい。駅前も百穴も、前回訪問時よりは多少にぎわっているとはいえ、町自体の静かな雰囲気は変わらない。岩室観音の楼上に登って3か月前にも見た市街地の景色も眺めたが、周りに五、六人の人がいたので以前のような感動も、恐ろしさもなかった。