場所:東京都多摩市連光寺(都立桜ケ丘公園内)
開館時間:10:00~16:00、月・水曜休館
入館料:無料
アクセス:京王永山駅・聖蹟桜ヶ丘駅からバスで「記念館前」下車徒歩5分、京王永山駅・聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩約40分
【説明】
昭和5年(1930)、明治天皇の側近であった田中光顕主導のもとに建設された、明治天皇の顕彰施設。
記念館の建つ連光寺は、かつて皇室の狩場であり、明治天皇は4回ほど訪れたことがあったという。田中はこの地に、三条実美別邸であった対鴎荘(明治天皇が訪れたこともあった)を移築し、また新たにこの記念館を造営することで、明治天皇顕彰のための空間を築く。戦前は軍人や学生が多く訪れた。戦後も多摩聖蹟記念会により管理されていたが、現在は多摩市により管理運営がなされている。
記念館の建物は、オーストリアの「セセッション」と、ドイツの「ユーゲントシュテイル」というデザインを融和させたものであるといい、独特の様式。円形の建物の中心には楕円形のホールがあり、ここに明治天皇の騎馬像が安置されている。
また、記念館前には明治100年を記念して昭和43年(1968)に建設された五賢堂がある。内部には明治天皇の立像および、三条実美、岩倉具視、木戸孝允、大久保利通、西郷隆盛の5人の志士の胸像が安置されている。田中光顕の像が無いのは少しかわいそうだ。
【訪問記】
2025年冬、京王永山駅から徒歩で訪問。記念館は丘の上にあり、ハイキングコースのような道を通らなければならなくて苦労した。兎平という平場を目印に進み、到着。標高は高いが、木々が生い茂り眺望は遮られる。
公園内でもアクセスしにくい場所であるため、訪問客は少なく静謐な雰囲気。特に手続きなく入館できる。
館内は撮影禁止なので、文章で様子を伝えよう。中心は楕円形のホールで、その中央の明治天皇騎馬像は台座を含めると5メートルほどの高さがあるように思われる立派なもの。容貌も写実的だ。その周りを洋風の柱が囲み、異国情緒あふれる雰囲気を醸す。
展示スペースは少なく、常設展示は対鴎荘(現存せず)の模型や、連光寺村にいた動物のはく製程度。その他は企画展スペース。訪問時は書道展として、田中光顕のコレクションした書画や、地元の子供たちの書初めが展示されていた。また、ホールの一部は喫茶スペースとなっており、軍国主義的な雰囲気は全くなくなっている。
屋外の五賢堂については、記念館事務室に声をかけると見学可能(見学可能日・時間等は不明)。職員の方が、重い扉を開けて簡単な説明をしてくださる。ただし、堂内に入ることはできない。写真撮影は可。
帰りは永山駅ではなく聖蹟桜ヶ丘駅方面へ向かう。こちらの道が記念館整備時からメインストリートだったようで、起伏も少ない舗装された道路が続き、見晴らしの良い場所もある。徒歩で向かう場合はこちらのルートが良いだろう。
【余談】
言うまでもないが、聖蹟桜ヶ丘の「聖蹟」はこの記念館が由来。しかし実際の聖蹟桜ヶ丘駅は、記念館からだいぶ離れた多摩川沿いの低地であり、もとは「関戸」の名を駅に冠していた。
それが聖蹟記念館への表玄関となったために改称したのだろうが、結果的に後年の開発事業・ブランディングには有利に働いたと思われる。
名所評価
面白さ:★★★
・展示館自体は小規模だが、独特な建築や明治天皇顕彰の在り方など、ここだけのものがある。
再訪度:★★★
快適さ:★★★
・施設自体は戦前のもので古いが、職員も多く清潔に保たれ、喫茶まである。
アクセス:★★★
・新宿から電車で30分、そこから徒歩30分程度ではあるが、何もない道や公園を歩くので体感的に遠く感じる。
周辺スポット:★★★
・桜ケ丘公園内には明治天皇の句碑や満蒙開拓団の慰霊碑である拓魂碑などがある。景色も良い。聖蹟桜ヶ丘駅周辺は関戸合戦に関する史跡が残り、ジブリ映画の舞台となった場所もあるらしい。
個人的満足度:★★★★
・諸行無常というと大げさだが、時代の変化に思いをはせることができる場所である。
建物正面全景
入口
正面回廊。木々の間から多摩の街が見える。
裏側
五賢堂
五賢堂内部
建物付近
変な形のベンチもある
説明板
五賢堂説明
永山方面から記念館への道
分かれ道は道標を確認し、「兎平・記念館」の字のある方へ
園内案内図
桜ヶ丘公園からの眺望
木に阻まれなければ、記念館からも同様の景色が見えたはず
兎平
永山方面から記念館へ向かう目印となる場所
館内図
参考:「田中光顕と多摩聖蹟記念館」(『多摩市史 通史編2』)、https://adeac.jp/lib-city-tama/text-list/d100020/ht012330