場所:埼玉県羽生市弥勒(円照寺境内)
開館時間:9:00~17:00 休館日なし?
入館料:無料
アクセス:羽生駅からバス「むじなもん号」で「田舎教師像前」下車、徒歩3分。ただし、バス本数僅少。羽生駅から徒歩約1時間半。
【解説】
田山花袋(1872~1930)が明治42年(1909)に発表した小説『田舎教師』に登場する「お種さん」をテーマとした小さな資料館。『田舎教師』は、旧制中学校を卒業した文学青年・清三が、家庭の貧困のために夢を諦め、小学校の代用教員として赴任した田舎町・弥勒で埋もれていく姿を描いた自然主義の名作である。そのストーリーは、実在した人物・小林秀三(1884~1904)の残した日記がもとになっている。
「お種さん」も実在した人物で、本名は小川ネン。明治9年(1876)に新潟県柏崎市で生まれ、12歳の時に一家そろって弥勒に移住。この地で小川家は料理店「小川屋」を経営し、ネンはその看板娘であった。もっとも、小説の中での登場はわずかである。この資料館は、運営する円照寺に「お種さんの墓」が建立された縁で、昭和56年(1981)に開設したという。
【訪問記】
『田舎教師』を読んで感動し訪問。清三にならい、行田駅から歩いて訪問した。清三は行田市忍城下で育ち、行田から弥勒までを移動する姿も描かれている。羽生駅から弥勒までの道は、申し訳程度に白線は引いてあるものの、歩行者の存在を前提としていないような場所が多く難儀した。帰りは乗り合いバス「むじなもん号」で帰ったが、本数は少ないうえに、土日祝日は運休している。
資料館は、実際には資料室ないしは休憩所と呼ぶべき規模。管理人等は常駐していない(お寺の方が管理されいるのだろう)。展示物は小川屋で使われていた食器や民具が中心であり、『田舎教師』や田山花袋、お種さんに関する説明文が壁に掲げられている。
近辺には『田舎教師』の舞台となった小学校跡や、清三の銅像などもあるが、弥勒で展示があるのはここだけである(羽生市立郷土資料館にも展示あり)。
【余談】
資料館の外観の写真も撮影していたが、私がガラスに映りこんでいたので掲載しない。
4月~11月の特定期日には、羽生駅からさいたま水族館への無料直通バスが運行される(おおよそ毎時一本)。さいたま水族館からは徒歩30分ほどなので、このバスを利用し、水族館とセットで訪れてもよいかもしれない。➡さいたま水族館リンク
名所評価(★は5が最高)
面白さ:★★
・展示室は一室。内容も民具が中心であり、物足りなさは否めない。
再訪度:★
・近隣の人でなければなかなか再訪はしないだろう。
快適さ:★★★
・ほぼ確実に展示室は独り占め可能で、ゆっくりとできる。展示室はやや古いが、清潔。
アクセス:★
・公共交通機関を利用する場合は、かなり不便な場所にある。自動車訪問であれば東北自動車道沿いであり、不便ではないかもしれない。
周辺スポット:★★
・『田舎教師』ファンなら、弥勒の近辺を歩くだけで感慨に浸れるだろう(もっとも、往時の面影はない)。徒歩約30分で、さいたま水族館を訪問できる。
個人的満足度:★★★★★
・『田舎教師』ファンの私にとっては、アクセスの不便さが逆に訪問の感慨を深くした。
円照寺山門
資料館は寺の境内、入って右方向にある
お種さんの墓
境内の目立つ場所にある
資料館内
資料館内に展示された地図